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ドラマ評:「沈まぬ太陽」は終わらない
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    JUGEMテーマ:書評

     

    1985年8月12日18時56分、日本航空羽田発伊丹行き123便、ボーイング747が御巣鷹山に墜落し、520名の尊い命が奪われました。

     

    航空機事故で520名という人数が亡くなる前代未聞の惨劇を描いた小説が山崎豊子氏の「沈まぬ太陽」です。

     

    以前のブログで本の紹介でも触れましたが、山崎豊子氏は長期に渡る渾身の取材を敢行し、遺族の悲しみに泣き、政官財癒着に怒り、様々な圧力に屈することなく1999年に週刊新潮で連載を開始。2001年に3編5巻の小説として刊行され700万部を売り上げました。

     

    恐らく多くの方に影響を与えたと思われる「沈まぬ太陽」。わたしもかれこれ10年以上、この本の記憶が常に頭のどこかにあり、その理由は3巻「御巣鷹山編」に描かれた想像を絶する凄惨で、かつ憤りの持って行く先のない遺族の方々の深い悲しみ。

     

    そして当時のニュースでは知ることができなかった、事故現場に駆け付けた県警、自衛隊、消防、医師、日本赤十字、ボランティアの方々の壮絶かつ献身的な人間として崇高な彼らの行動を読み、涙したことにあると思います。

     

    こんな悲劇を二度と繰り返していけません。「沈まぬ太陽」では御巣鷹山の悲劇を招いたプロセスを克明に描いています。先に述べた日本航空という当時腐りきった半官半民の大企業と労組、政官財の癒着など、この小説を映像化することは困難だと思っていました。

     

    2009年についに映画化がされました。202分にも及ぶ大作。しかしながらわたしはこの映画を観終った時に、落胆し、怒りさえ覚えました。

     

    「沈まぬ太陽」を映像化するには限られた時間の中で、様々な視点で構成する必要があり、その構成次第で「沈まぬ太陽」の解釈は良くも悪くも変わります。

     

    映画「沈まぬ太陽」は恩地元(小倉貫太郎氏)の生き方に終始しました、またあり得るはずのない検視に使われた藤岡市市民体育館での子供の遺言の朗読、陳腐なCG、事故原因の核心への追及が甘く、この映画のテーマを一言で言えば「恩地元の男の生き様」でしょうか。

    ちなみに藤岡市市民体育館は腐敗臭が抜けず、後に取り壊しになっています。

     

    制作委員会という映画のあり方の限界を痛感しましたが、なんとその年の日本アカデミー賞を総なめにしました。

     

    やはり「沈まぬ太陽」の映像化はあまりに重たい内容のために、映画もビジネス、商業視点になり、山崎豊子氏の世に問うたテーマの映像化は無理なのだと思っていました。

     

    そこにWOWOWが2016年に「沈まぬ太陽」を20回でドラマ化しました。WOWOWのドラマは質が高く、例えば「震える牛」「地の塩」「尾根のかなたに」など有料放送ならではの社会的圧力を感じさせないドラマを送り出してきました。

     

    わたしは観たくてしかたがなかったのですが、我が家はWOWOWの受信契約しておらず、先にレンタルが開始されようやく全回観ることができました。

     

    WOWOWの「沈まぬ太陽」は期待を裏切らない、少し突っ込みたいところはありますが、見ごたえのある作品でした。

     

    事故に至る経緯、恩地元(小倉貫太郎氏)の境遇、企業の腐敗、政官財癒着、そしてなにより山崎豊子氏が仮名にしつつ、名前がすぐにわかる政治家の面々がスーパーで紹介されていました。

     

    観る価値の高い、良質なドラマだと思います。

     

    さて「沈まぬ太陽」は今から30年前の話。この悲劇の反省から今の日本で同じような事件は解消されたのでしょうか。

     

    以下はわたしの個人的見解であり、推察です。何ら裏付けもありません。

     

    最近の典型的な事例として東芝の現状がどうしても「沈まぬ太陽」と重なって見えてしかたがありません。というのもWH社の買収。これは誠に不可思議な買収です。

     

    WH社の原子炉は民需だけではありません。原子力空母ニミッツ級が搭載する原子炉はWH社製です。米国海軍の最高軍事機密を保持するWH社を民間の東芝がなぜ高額で買収することになったのでしょうか。

     

    他国の最高軍事機密を持つ企業買収など普通に考えてあり得る余地はないと思うのです。なぜなら買収しても軍事技術の共有などあり得ないし、それを盾にWH社は共同経営にまともに取り組むはずがありません。

     

    東芝経営陣の、あのあまりになさけない弁解、体たらく。未だ明確にならない会計監査。世の論評は「東芝の経営陣は無能」で総括されています。果たしてそれだけなのでしょうか。

     

    大きな圧力に乗じ、そして梯子を外された、まさに「沈まぬ太陽」と同じことを繰り返したのではないでしょうか。

     

    東芝は巨大な企業でした。グループ会社、支える下請け会社を含めると、今回の経営危機で、とてつもない数の方々に悲劇が起きています。

     

    山崎豊子氏は「沈まぬ太陽」注釈の中で、以下の言葉を述べています。

     

    「多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関、組織なども事実に基づき、小説的に再編成した。」

     

    悪しき慣習、既得権益、不当な利益供与。歴史はこれら悪癖を繰り返すことを如実に物語っています。

     

    「沈まぬ太陽」は終わらない。残念ですがわたしはそう思えてなりません。

    posted by: 中高年の就活 ブログ(Powerd) | ドラマ評 | 20:42 | comments(0) | - |